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100年に一度の激変期に突入した自動車産業。
開発の最前線を担う技術営業の仕事とは

萩原エレクトロニクス株式会社応用技術本部 第二デバイス応用技術部 第一グループ 主任澤田佳奈

萩原エレクトロニクス株式会社は、中部地域において70年の歴史を持つ技術系商社、萩原電気ホールディングス傘下の事業会社だ。同グループではデバイス事業、ソリューション事業の2事業をメインに、自動車などの製造業、インフラ関連、先端医療機器関連など幅広い分野にトータルソリューションを提供している。今回スポットを当てるのはデバイス事業で勢いを増している萩原エレクトロニクス株式会社。HV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)の増加で電子化が加速し激変期を迎えた自動車業界において、エンジンコントロールユニット用MCU(マイクロコントローラユニット)など、今後の自動車の進化に不可欠な電子デバイスの供給を担う商社として、トヨタ自動車やデンソーといった大手メーカーと強固なパートナーシップを築いており、大きな役割を担っている。そうした状況のなか、大手半導体メーカーの開発職から転職した澤田佳奈主任に、自動車業界の開発パートナーとして求められている役割について話を聞いた。

次世代の電子デバイス開発に関わり、
自動運転技術の普及に貢献する

現在の自動車業界では、自動運転技術の普及に向けた開発が急ピッチで進められている。技術的には実証実験が可能なレベルに到達したが、本格的な普及に向けては、多くの課題が残る。そのなかで、トヨタ自動車や主力サプライヤーであるデンソーに、半導体ベンダーと協力して自動運転に最適なSoC(System on a Chip)の提案を行っているのが澤田氏だ。

これまでの自動車では、MCUによるブレーキやステアリング制御が主流とされていた。自動運転の普及にはデータ処理能力のさらなる向上が必要であり、MCUよりも大規模なデータ処理を可能とするSoCが次世代のメインデバイスとなる。ところがこのSoCにおいても、どれだけのスペックがあれば目標の性能を実現できるのか、いまだ明確に定義できていないのが現状だ。

そこで澤田氏が、トヨタ自動車やデンソーの開発部門から求められる要件を整理し、次世代SoCのスペックを数値によって定義し、情報提供を繰り返すことで開発サポートを行っている。「人が運転しなくてもいいレベルにまで自動運転技術を進化させるためには、どこまでの処理能力を持った電子デバイスが必要なのか。誰も正解がわからない。そのなかで目標の性能を実現するためのスペックを一つひとつ明確にしていき、形にするためのディスカッションを繰り返す毎日です。激変のさなかにある自動車業界で働くことは、非常に刺激的です」と、現在の業務を語る。

社内外問わず多くの人と関わり、
同じ技術課題を解決するチームで仕事がしたかった

澤田氏は静岡大学工学部で電気電子工学を専攻し、卒業後は国内大手の半導体メーカーに就職。7年間の東京勤務を経験した。前職ではマイコン内部の回路設計を担当。学生時代からの専攻を生かした回路設計の仕事は学ぶことが多く、開発に従事する毎日は充実感があった。しかし、キャリアを積み重ねるにつれて「もっと多くの人と意見を交わしながらモノづくりがしたい」と感じるようになったという。

当時の主業務で得られる情報といえば、社内のマイコン開発部隊からの設計指示のみ。自らが設計を担当した回路を搭載したマイコンが、どのような産業で、どのような役割を担うのか。また、ユーザーの課題をきちんと解決できているのか、仕事の成果を実感できる瞬間は、ほぼないといってよかった。そうした日々が続くなかでいつしか、ユーザーはもちろん、ベンダーなど社内外のあらゆる関係者と共通の目的意識を持ち、同じ技術課題の解決にあたるチームの一員としてモノづくりに関わりたいという思いが強くなっていった。

そんな折、プライベートで転機が訪れる。結婚を機に、名古屋に移り住むことが決まったのだ。「いいきっかけになるかもしれない」と感じた澤田氏はさっそく転職活動を開始。今までのキャリアを生かし、なおかつ、多くの人と関わりながら製品開発に挑める環境を探し、巡り合ったのが東海圏で技術系商社として確かな実績を持つ、萩原電気エレクトロニクス株式会社だった。

自動車の電子化が加速するなかで、
われわれ自身にも技術力の強化が必要

澤田氏のような技術者を求めた背景にどんな事業戦略があったのか、直属の上司である石川重信取締役に話を聞いた。「大前提は、われわれの主要顧客である自動車業界において、激変期ともいうべき急激な変化が起きていることです」と、石川氏は語る。

そもそも、自動車部品の電子化が進展したのは1980年代のことだ。それまで、エンジンやステアリングといった自動車の機構はすべて機械式の制御によって行われていた。しかし、1980年代を境にマイコンによる電子制御化が一気に進み、以降、自動車に搭載する電子部品のニーズは拡大。近年、その需要はさらに高まっているという。背景にあるのは自動運転技術の開発や、EVの登場、その先のコネクテッドカー(インターネット常時接続機能を搭載した自動車)の実現に向けた大きな潮流だ。

「こうした流れを象徴する言葉として、2016年のパリモーターショーでダイムラーが発表した『CASE』というキーワードがあります」と語る石川氏。「CASE」とは4つのキーワードの頭文字を取ったもので、コネクテッド(接続性)の「C」、オートノマス(自動運転)の「A」、シェアード(共有)の「S」、そしてエレクトリック(電動化)の「E」だ。電子化による自動車の進化がさらに加速していくことを象徴するもので、今後は全世界の自動車メーカーが同方向に開発を加速化する。「そうしたなかでわれわれも、クライアントの開発にこれまで以上に寄与し、技術的な視点での介在価値をより高める必要があります。澤田を迎えたのも、そうした技術強化の一つです」

今後の自動車開発に貢献するため、社内の技術者の育成に加え、社外の優秀なエンジニアや異分野で活躍する方を募り、自社の技術力を高めていく必要がある。澤田氏のような経験を持つ技術者はまさにうってつけの人材だった。