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国内でも数少ない、排水処理装置に特化する企業に転職。
技術者として、経営者として仕事にまい進

株式会社イーシステム代表取締役谷山暁進

大阪市に本社のある株式会社イーシステムは、工場の排水処理装置をつくる企業だ。主に食品加工会社の工場を対象に、同社独自のバイオアシストというシステムを使って、省エネかつ安定的な排水処理を提供している。聞くところによると、この業界には多くの大手企業が参入していたものの、今はその多くが撤退しており、国内でこの事業を営む主要な会社は同社を含めて数社程度だという。そんな業界に転職してきた谷山暁進(あきのぶ)代表取締役にこの仕事の魅力を聞いた。

一つ一つ設計が異なる排水処理装置

一見なじみがないようで、私たちを取り巻く環境に大きな影響を及ぼしているのが排水処理。工場の排水処理装置をつくる仕事とはどのようなものなのか。一般的に、各家庭からの排水は一日あたり1立方メートルとされるのに対し、工場からの排水は500~1,000立方メートルだといわれる。水の濃度も工場排水の方が10倍高い。その排水を河川に流しても問題ないレベルに処理するのが同社の装置だ。

同社の顧客となる工場は、主にハムやソーセージ、弁当、総菜などの食品加工会社。ある大手コンビニエンスストアの弁当工場では、使用している排水処理装置の約半分がイーシステムのものだ。実はこの排水処理は、工場運営の大事な要因にもかかわらず、装置を建設するための規制法令が複雑であるという。工場からの排水の特性や顧客の要望、ランニングコストの低減策等を判断して、そこに最もふさわしい装置をつくる。

同社のバイオアシストは微生物を利用する排水処理方法の一つで、装置の設計には生物学的な知識が不可欠だ。工場で扱われる品目によって性質の異なる排水、それらと微生物が引き起こす複雑な反応を想定して下す総合的な判断。その複雑なプロセスを前に多くの企業が十分な性能を提供できず撤退していった。そのなかで、同社は長年培ってきた技術力と設計から運用までの一貫した体制で、排水処理装置に特化する希少な会社として知られている。谷山氏はそんな同社に2015年に入社した。

プロセスを一人で担当するのが魅力。
工学と自然環境に関わるところに前職との共通点も

谷山氏は九州工業大学大学院で土木工学を専攻。卒業後は建設コンサルティング会社に就職し、土木事業の計画・設計に約8年間携わった。「土木事業のなかでも環境保全や再生など、環境的な側面から関わっていく仕事でした」と前職を振り返る。

そんな谷山氏がイーシステムに転職した理由はなんだったのか。「もともと私はものづくりが好きだったんです。どんなものをつくるか考えて、実際につくり、人に見てもらう。それをトータルで行うのがものづくりだとすると、前職で携わったのはその一部だけ。しかも土木構造物は大きいので、5年から10年という単位で動く事業がほとんど。その間に自分の意志とは全く違うものができたりするんです」と思い描いていたものとの差を明かす。

同社では、製品(システム)の営業から受注、設計、施工、運用までの一連のプロセスをすべて一人の技術者が担う。「この仕事のスタイルが良かった」と谷山氏。「一つの物件に対していろいろな側面からものづくりを突き詰めていく点に引かれました」と話す。

その一方で、同社の仕事は前職との共通点もあった。「前職では環境的な側面で土木事業に関わりました。今の仕事も装置という水槽の中で微生物を利用して汚水を処理する。スケールの違いはありますが、どちらも工学的な面と生物学の2つを理解して仕事にあたる点が似ています」

いろいろなことに疑問を感じるセンス、
お客様にかわいがられる人柄を評価

同社の技術の要となるバイオアシストを開発したのは、須藤啓二会長兼技術研修室室長だ。須藤氏は同社の創業者でもある。「この仕事は生物学的な知識と工学の知識の両方が必要です。技術力をつけるために最低5年、あるいは10年かかる。私がこの業界で40年かけて身につけた技術を後進たちに伝えたいのです」

その後進の筆頭が谷山氏である。実は須藤氏と谷山氏は義理の父と息子の関係にあたる。その間柄が谷山氏の転職のきっかけになったものの、「義理の親子であることは関係ない」と須藤氏は言い切る。「この仕事はある程度の基礎が必要です。学歴があるからできるわけではなく、いろいろな現象や通説に疑問を感じるセンスを持っている人でないと難しい」と理由を示す。

装置の中では複雑な反応が起こっており、それらを総合的にとらえる力が同社の技術者には必要だ。「物事を冷静に判断できる、先入観にとらわれない、偏った見方をしない。そういう資質を持った人かどうかを意識して採用にあたっています」と須藤氏。谷山氏はその基準に合致した。

「彼に基礎的な知識があるのはもちろんですが、一番強く思うのは、ものに興味がある点です。ちょっとしたことでも疑問を持つ。だから伸びしろがありますね」と評価する。そして、「お客様にいいものを提供したいとか、お客様の抱える問題を解決してあげたいという気持ちも強い。どんなお客様とも上手にやっている。そこがしっかりしているので結果はこれからついてくるでしょう」と期待する。