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HIGHLIGHT

応用先は無限大。ミライセンスが見据える
3D触力覚技術を応用した技術・サービスの未来

株式会社ミライセンス

ワールドワイドに取得した基本特許に支えられた技術力

パソコンのディスプレーに映し出されたスイッチ画像を見ながら手元のフラットパネルを押すと、カチッという手応えが伝わった。しかし、パネルの表面を確認しても、そこに凹んだ形跡は見つからない。この驚きこそがミライセンスが提供する体感の世界だ。

2015年10月には、日本最大のIT・家電関連の展示・商談会「CEATEC JAPAN 2015」で3D触力覚技術が「CEATEC AWARD(審査員特別賞)」を受賞した。日本の名だたる大企業と肩を並べての受賞は、今後のビジネスをより拡大させるチャンスをつかんだものといえる。

また、2016年1月にラスベガスで開かれた全米民生技術協会主催の見本市「CES 2016」では、体験型デモにチャレンジする来場者でブースが埋まるほど大反響を呼んだ。

この3D触力覚技術のベースとなっているのが、ミライセンスの創業メンバーである中村氏が発明した「錯触力覚技術」である。この開発の原点となっているのは、1985年のつくば科学万博だったと中村氏は言う。

「自分自身も含めて目の前に現れる立体映像を無意識的につかもうと手を伸ばす人たちの姿を見て、人間は目の前に現れると『触りたい』という欲求が生まれるのだと知りました。人間は触るというコミュニケーションを通してモノを理解しようとする。人間の持つアナログ的なこの感覚をデジタル化できる技術を開発したいと、触覚を再現するVRの開発の道へ進みました」

そして、この技術がいずれ新しいマーケットを切り開くと確信し、2000年から戦略的に特許を取得。現在、3D触力覚技術は、ワールドワイドに展開した24件の特許(24件出願済み、うち16件が登録済み)に支えられたオンリーワンの確かな技術として確立している。

力覚・圧覚・触覚の「三原触」であらゆる体感を表現

3D触力覚技術は、ミライセンスが名付けた色の三原色ならぬ、「三原触」によって設計されている。香田夏雄コファウンダー・代表取締役は、「引っ張られたり押される感じの『力覚』、硬さや柔らかさを感じる『圧覚』、ザラザラ・つるつるなど表面を触ったときに感じる『触覚』の3つの感覚を、ブレンドしたり割合を調節して組み合わせたりすることによって人間が感じるあらゆる感触を表現できる技術です。この3つの感覚を同時に1つのデバイスで再現できるのが僕たちの強みです」と説明する。

ミライセンスは、この技術を実用化するべく、JST(科学技術振興機構)の補助金制度「A-STEP」を利用し、1年間の研究開発期間を経て設立した。

「しかし、実用化のめどは立ったものの、課題は残りました」と香田氏。設立当初は現在のサイズと比べると数倍の大きさで、実装に不向きなものだったという。例えば、ゲームのコントローラに引っ張られる感覚や重さの感覚を入れられたらと考えていたものの、そのときの大きさでは握り部分に入らなかった。

そこで半年間かけてさらなる小型化の研究を行い、指先に装着して無線通信できるフリーハンドタイプの出力系デバイスを完成させた。さらに冒頭で紹介した、ボタンの押し込みをリアルに体感できるフラットパネルタイプなどのデバイスも開発。「応用先は無限です」と香田氏が笑顔を見せるように、現在は形状を自由に造形し、さまざまなデバイスへの実装を可能にしている。

5年後、体感のないVRの世界を想像できない時代がやってくる

ミライセンスでは3D触力覚技術の応用先としてゲーム、携帯電話、自動車、医療・福祉の4つの分野を見据えている。最終的に目指すのは医療・福祉分野だ。

「手術支援ロボットによる遠隔手術システムに3D触力覚技術を搭載することで、遠隔地にいる医師が、ロボットが受け取る感覚を疑似的に体感しながら手術できるようになれば、救える命が増えるかもしれません。また、三原触の力覚を利用したリストバンドに目的地を入力できるデバイスを組み合わせることで、視覚障害者を目的地へ引っ張るようにナビゲートできると考えています。この技術が人間中心型のサービスとして人の助けになって活用されていくことが理想です」と中村氏は語る。

2015年9月に3億円を資金調達したミライセンス。これによって3D触力覚技術の研究開発を加速させ、体感ビジネスのさらなる普及拡大を本格化している。

香田氏は「今後、3D触力覚技術は急速にあらゆるデバイスやサービスに導入され、5年後には、VRをはじめとするデジタルコンテンツに『体感』がなかったなんて想像もできない時代が到来するだろう」と予想する。その未来には、これまで体験したことのない新しい感覚世界が広がっている。