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EXECUTIVE

秘めたる熱き「理念」と確固たるビジョン

株式会社ロックオン代表取締役社長岩田

「起業したいと思ったことは一度もない」

「気がついたら起業していた、という感じ。起業は一つの手段でしかない」。マーケティングプラットフォーム事業とEC事業において、業界を代表する企業をけん引する岩田氏の発言は意外なものだった。

岩田氏は大学入学後、バックパッカーとして海外を放浪した経験を持つ。岩田氏にとってこれが初めての海外旅行だったが、訪れた地はシンガポール、マレーシア、タイ、そしてニューヨークと幅広い。

そこで岩田氏は自分がまだ知らない世界が多く存在するという現実を目の当たりにし、「旅行などの一時的な滞在ではなく、世界と対等に渡り合えるビジネスマンとなってその地に再び降り立つ」と心に決めた。そして、この強い思いは今も岩田氏の原点であり続けている。

岩田氏は当初、挑戦する業種業態にはこだわらなかった。最初に目を付けたのが、実家の最寄り駅構内にある飲食店だった。アルバイトとして勤務し始め、その後店舗の経営を譲り受けるまでになるが、当時ビジネス経験のなかった岩田氏は多くの課題に直面する。

結果的に、経営を譲り受けてから1年ともたずに閉店に追い込まれてしまった。普通であれば、この失敗によって大きく挫折してもおかしくはない状況だが、岩田氏はそうではなかった。そして次にとった行動は、悲嘆に暮れるのではなく、失敗した原因をとことん分析することだったのだ。

岩田氏はある結論に至った。それは店舗が所在する「立地」の問題である。もともと駅構内の飲食店ではあったものの、メーンとなるコンコースではなく、自転車置き場に行く途中の通路のような条件の悪い場所に店舗を構えていたため、人の流れをどうしても呼び込めなかったのだ。そこで岩田氏はこう考えた。「立地に振り回される飲食というビジネスドメインに、今後産業界で残っていける『立地』が残っているのだろうか」

これを教訓に、岩田氏が今後のビジネスの「立地」として選んだのは、「インターネット」の世界だった。そう、ここで初めて岩田氏は現在のビジネスへと続く「インターネット」とリンクしたのである。

インターネットの本質を見抜いた瞬間

誰もが簡単に世界中の情報を集められるインターネット。岩田氏は、その本質は「双方向」にあると当時から見抜いていたという。「それまでのテレビやラジオ、新聞のように情報を持つ側から一方的に発信だけするのではなく、その情報を受信した側からもリアクションを返してもらえる、この双方が交わる点である『結節点』、これがインターネットの世界で成功するポイントだと確信しました」と岩田氏は話す。

インターネット業界で成功するためには、情報を扱う技術よりも「結節点のログ情報」自体の蓄積を優先すべきだ。この発想が、アドエビス誕生のルーツになっているという。

当時大学生だった岩田氏は、この考え方を「クリックコミュニケーション」と命名し、大学生のビジネスプランコンテストで発表。相互に情報が行き交うなかで結節点を重視する発想は、まさに現在のマーケティングプラットフォームにつながるものだ。

だが、そうしたビジネスアイデアはあっても、当時の岩田氏にはそのアイデアを形にする技術力がなかった。そこで大学在学中に、技術の根幹を担うネットワークエンジニアとしての知識や技術を磨くことに没頭。当時はネットワークエンジニアリングに関する書籍がほとんどなかったが、英語の文献などを読みあさり、知見を増やしていった。

また岩田氏には、「今流行しているものに、今手を付けると負ける」という感覚が創業時からあったという。今、この瞬間に流行っているもののシェアを大手企業から勝ち取るのは、あまりにも無謀であり非効率。成功するためには、世の中で着目されるはるか以前から流行するものをあらかじめ見つけ出し、そして時間をかけてそれを作り込むことで、あるタイミングで一気に跳ねると予想したのだ。その先見の明は、今も輝き続けている。

関西に拠点を構え続ける理由

「東京には確かにIT企業が集中しています。ですが、東京のIT企業で世界を相手に戦えている会社はいくつありますか?ほとんどは世界に飛び出しても大きく成功していないですよね」

IT企業が東京有利というイメージは、あくまで国内の視野で見た場合のものであって、グローバルな目線で見れば東京も大阪も同じチャレンジャーであり、大差はないというのが岩田氏の持論だ。さらに岩田氏は、関西という土地そのものが、世界に通用する魅力的な立地だと付け加える。

「日本人は海外に出たとき、日本製のサービスや製品を無意識に利用しようとしますよね。一方、日本にいるときにカレーを食べたいと思った場合、日本人のシェフがいるお店と、インド人のシェフがいるお店が並んでいれば、後者を選ぶことが多いと思います。なぜなら、インドで生まれ育った人がその歴史を持って、日本でカレーを作っていることに何となく価値を感じているからです。つまり、グローバルな社会における競争優位性は、文化に根付いたものになると考えています。そして、日本が培ってきた文化や歴史の中心は東京ではなく京都をはじめとする関西です。この文化に触れ、学ぶことこそが、日本が世界に通用するプラットフォームを開発する、一番の近道ではないかと考えているんですよ」

日本国内の需要や労働人口は今後減り続けていく。世界とはますます厳しい競争になることが予見されるが、こうした状況に置かれている日本だからこそ大きく伸びる産業がある、と岩田氏は考えている。労働力不足を解消するロボットだ。インターネット、そしてマーケティング領域を含むあらゆる産業において、ロボットは活躍するようになるはずだと断言する。

「今まさに、ロックオンは事業ドメインを再定義している段階です。そのなかで私たちは『マーケティング ロボット』カンパニーであるということをビジョンとして掲げています。先ほども言った通り、日本国内の労働人口は減っていき、マーケティングに関わる人も、もちろん減っていくことが予想されます。つまり、近い将来、企業とお客様とのコミュニケーション円滑化のために、ロボット(人の代わりに自動化・効率化をするもの)が必要な時代がやってくるということです。コミュニケーションを円滑にするためのロボットと仕組みを作り、そこでのユーザー体験を創出する。そして、ロックオンはその最前線にいる組織でありたいですね。今、この瞬間に流行っているビジネスに手をつけても大きな成果は得られない。世の中に注目されるはるか前から、今後流行するものを見出し、時間をかけて作り込む。それがロックオンという会社の生きる道だと思います」