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HIGHLIGHT

いいモノをつくれば必ず一番になれる

株式会社DG TAKANO

思いもよらなかった節水市場に参入

DG TAKANOが始まったのは、意外にもIT企業としてだった。「これからの時代、何をするにもITの力は必要だ」。そう感じていた高野氏はIT企業に就職。ノウハウを習得すると早々と3年で退職しITの会社を立ち上げた。

Web系のサービスの会社だったため、最初に来た仕事は他社の節水製品をインターネットで販売したいという相談だった。手に取ったその製品の価格を聞いて高野氏は目を丸くする。町工場育ちゆえ自身に技術はなくとも製造原価がすぐにわかったからだ。「どうしてこれがこの値段で売られているのか……」

気になって節水の市場を調べ始めると、大企業の参入はなく環境系の中小企業が似た製品をつくっていることがわかってきた。モノづくり系の会社が参入していないから製品レベルが非常に低く、きちんと特許が取れていないものすらある。「この市場なら、いいモノを作れば必ず一番になれる」。インスピレーションを得た高野氏は、節水市場に挑戦することを決めた。

研究と試作を繰り返し、世界に通用する製品を目指す

世界の人口は2050年には約91億人になるといわれ、人口増加に伴い水の使用量も増え、現在の増加率では年間の水需要が約640億立方メートル増加すると考えられている。また、地球温暖化による気候の変動、世界各国で起こっている水紛争もあり、世界で水資源の確保が問題視されている(出典:国土交通省水管理・国土保全局水資源部Web)。

「世界的にみても、節水市場は必ず大きくなっていくにちがいない。おもしろいじゃないか」。高野氏はまず他社製品の研究からスタートさせた。構造や機能、性能を徹底的に比較する一方で、節水に関する特許資料を読み込む。すると、実現困難な例、実用化できなかった例など節水市場を取り巻く問題、課題が徐々に浮き彫りになってきた。既存の権利を侵害せずに、まったく新しい発想が必要だと感じた高野氏は、今までにない「節水蛇口」を軸として開発することを決意する。

会社で働くのは高野氏ただ一人。職人ではない高野氏が開発するには、まず機械の操作方法を学ばなくてはならない。そこで高野氏は父の工場へ出向いた。幸いにも熟練の職人ですら持て余すような最先端の機械が空いていて、これを使ってサンプルづくりを始められることに。「一人前に動かせるようになるには3年かかる」といわれていたが、独学で習得してわずか3カ月で最初の試作品が完成した。高校まで理系を志していたとはいえ、誰もが簡単にできることではない。ここに高野氏のポテンシャルの高さ、素質がうかがえる。

試行錯誤を繰り返し87%の節水率を誇る試作品ができ、ようやく完成形のルートが見え始めたころ「世界最大規模の水の見本市に出してみないか」と誘われメッセベルリン2009「水」専門見本市に出展することに。製品はまだでき上がっていなかったが、見切りで申し込み、出発数時間前のギリギリに完成。最初の7個を持って飛行機に飛び乗った。

不安とは裏腹に見本市は大盛況だった。世界中の人々がブースに集まり高い評価をし、市場のニーズ、確かな手ごたえを感じられたのだ。見本市から2カ月後、実用化に向けて量産体制を整え、開発から1年足らずで会社が軌道に乗り始めた。

史上初の快挙、その後の苦悩を乗り越えて

試作品にして17作目。ようやく現在の完成形に近づいた2009年5月、産業・社会の発展に貢献することを目的に部品・部材にスポットをあてた「“超”モノづくり部品大賞」にエントリーしたところ、大賞を受賞した。日本のモノづくりを語るうえで欠かせない、製造業に光をあてた業界トップクラスの顕彰制度での大賞。

同年の2位はTDK、前年の大賞は日立ツール株式会社(現:三菱日立ツール株式会社)と、そうそうたる大企業が受賞してきた名誉ある賞を設立1年目、社長1人だけの東大阪のベンチャー企業が受賞したというニュースは製造業界を大いに驚かせ、一躍脚光を浴びた。ベンチャー企業の受賞は史上初。まさに技術と発想の結晶といえよう。

「『 “超”モノづくり部品大賞』を受賞するまでは順調でしたが、ここからが大変だったのです」と振り返る高野氏。大賞をとって2010年にDG TAKANOを設立するも、東大阪の無名の会社には販路がない。大手をはじめ中小の商社に声をかけたが思うような成果が得られず、販路を見いだせずに4年が過ぎた。「このままではつぶれてしまう……」

失意のどん底にいたとき、ある社長との出会いにより販売先を外食産業にチェンジした。これが功を奏してDG TAKANOは大きく飛躍し、販売会社DG SALESを設立。超節水洗浄ノズル「バブル90」は、多くの飲食店で水道代を劇的に下げることに成功している。

一人で始まった東大阪のベンチャー企業DG TAKANOは、今や本社に16名、DG SALESに60名もの人を抱え、国内5カ所に営業所を持つまでに成長した。全国から集まった精鋭たちの力を蓄え、ついに本社・工場ともに東京へ進出することが決まっている。東大阪から生まれたサクセスストーリーはまだ始まったばかりだ。