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KEYPERSON

既存の技術ではない新しいものを試すことに
モチベーションの源がある

大研医器株式会社研究部田之上哲也

大学で学んだ医療分野に関わる企業で働きたい

研究部の田之上哲也氏は入社6年目。東京の大学院(博士課程)を修了後、出身地の大阪にある同社に就職した。「大阪だからという理由でこの会社を選んだわけではありません。大学で学んだ医療分野のことを生かせる企業で働きたかったのです」。大学では機械工学の流体力学を専攻。脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)が破裂するときの血流状態を分析・研究したという。

田之上氏は学生・院生時代に感じたジレンマを振り返る。「アカデミックな世界での研究はなかなか製品につながりません。自分が研究してデザインしたものが大学内では評価されても、企業から引き合いがあるわけではありません」。製品というのは、販売戦略や価格帯などを見据えたうえで研究に挑まなければ生まれないのだと強く感じたという。

そんな思いが企業を選択する際の基準になった。「医療機器を扱うメーカーのなかでも、大研医器では、研究開発の人間が製品の企画から製品を世の中に送り出すまで、深く立ち入って全部を見ていけます」。それが大研医器を選ぶ決め手になった。

他の企業が持ってこない技術を持ってくる。
それが医療現場からの評価

現在の仕事はマイクロポンプの研究開発。関西圏国家戦略特区の事業にも認定された、同社が現在最も力を注ぐ製品の開発である。田之上氏はそこで量産化に向けての設計を担い、仕様と性能の条件検討を重ねている。

「ミクロの世界を扱うので、設計通りのものがなかなか出来上がってこない点が苦労するところですね」。開発段階のばらつきは製品の性能に大きな影響を及ぼす。性能が単一になるように、いろいろな仮説をたてて仕様を絞り込んでいく毎日だという。一方、「検討を重ねて現実的なコストを見いだし、製品化の実現が見えてくるとうれしいですね」とやりがいを話す。

マイクロポンプの試作品を医療現場に持っていったとき、従来製品よりも大幅に小型化された設計に「こんなに小さなものができるの?」と驚かれたという。「大研医器は他の企業が持ってこないものを持ってくる、現場で医師が抱える課題に対し、画期的な解決方法を持ってくる会社だと思われているのではないでしょうか」。それがクーデックという同社のブランドへの評価だと感じている。

新しいものにチャレンジする精神

田之上氏の所属する開発チームは9人。メンバーに共通するのは「新しいものでないと価値がない」と考える点。「既存の技術の流用ではなく、新しいものにチャレンジするところに皆が魅力を感じ、モチベーションを高めています。それが特許を取れる可能性のある製品につながっているのではないでしょうか」と田之上氏は見る。

「チャレンジとは、たとえば課題が出てきたときに既存の技術を使うだけでなく、まだ使ったことがない技術を試してみること」と田之上氏は言う。使用材料や原理が解決手段として有効なのか、可能性を探り、実現性がありそうだと自分の中で感じられたら、反対意見を恐れずに周囲に働きかけて展開していくことを心がけている。

同社の開発には医師とのコミュニケーションも必須だ。「ものだけを見る研究開発はうちではありえません。ものを使う医療従事者と患者にまず関心を持つことが求められます」。医師へのヒアリングは日常業務のひとつ。田之上氏も自ら医師にアポイントメントをとり、医療現場の課題の芽を探しに頻繁に医療現場に足を運んでいる。

あとがき

「地鳴りが聞こえる」。同社の会議室に掲げられている代表取締役社長、山田満氏の言葉です。苦境を越えるときに強い勇気と意思が足元から地鳴りのように湧いてくる感覚をたとえているそうです。数少ない治療型医療機器メーカーとして「やればやるほど悔しさが増す」という山田氏の言葉に、きっと幾度となく地鳴りがあったのだと推察しました。同社に行くと、その精神が数々の製品群や働く人たちのモチベーションなどに一貫して息づいているとわかります。