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HIGHLIGHT

開発のポリシーは既存製品のまねをしないこと

大研医器株式会社

院内感染防止を目的とした手術室で使う吸引器

「うちは特許が取れる可能性のあるものしかつくらないというポリシーがあります」。そう語るのは江原穣執行役員企画開発部長。既存製品をまねしたような製品は世に出さないのが同社の流儀。1製品の中に1つ以上の特許があるのがその証しだ。

たとえば「フィットフィックス」という製品。主に手術室で出る血液や体液等の排液をプラスチック製ボトルに吸引し、ふたの中に仕込んだ凝固剤をワンタッチで押し出し、排液を密閉容器内で固めてしまう吸引器である。

それまで手術室で出た排液類はガラス製ボトルにため捨て、ボトルを洗い流して再利用されていた。しかし、その方法では院内感染の危険が避けられない。そこで排液類に一切手を触れないまま、ボトルごと処分してしまおうという発想で生まれたのがこの製品である。

「大変だったのは血液を固める凝固剤を開発するときだったと聞いています」。人の血液で実験するわけにはいかないため、食肉加工業者から血を分けてもらい、実験に携わる人たちは感染防止のワクチンを打って開発に臨んだと江原氏はエピソードを話す。

壮絶な努力が実り、同製品は特許を取得。特許が切れるまでの20年間、先駆者として市場を獲得した。院内感染防止を推進した意義ある製品のひとつである。フィットフィックスをはじめとする吸引器関連は現在も改良が重ねられ、国内でトップシェアを取り続けている。

疼痛(とうつう)緩和領域で高く評価される加圧式医薬品注入器。
マイクロポンプを用いた小型デバイスも開発中

吸引器と並び、同社の主力製品になっているのが加圧式医薬品注入器の「シリンジェクター」だ。薬液が患者の体に一定時間、一定量投与できる携帯用ポンプである。水風船の原理を利用したバルーンタイプの注入器のデメリットを補い、薬液が最初から最後まで安定的に注入できる点が高く評価されている。

「それができるのは唯一うちの製品だけ。国内のみならず海外でも注目されています」と江原氏。特に疼痛(とうつう)緩和の領域では圧倒的なポジションだという。このシリンジェクターこそ、同社が目指すオンリーワンでありナンバーワンである製品の代表格といえるだろう。

また、注目度の高い製品の開発も進行中だ。「マイクロポンプ」を用いたディスポーザブル型医療機器である。この開発は日本の国際競争力の強化に寄与する研究開発として、国から関西圏国家戦略特区の事業(第一号案件)に認定された。「弊社の製品はどれもポンプというキーデバイスの上に成り立っています。この技術を生かし、小型で低コストのデバイスをつくることで、今までなかった医療機器のエンジンができると考えています」と江原氏は語る。

2017年の春にはデバイス自体の製品化を、2020年までにはそのデバイスを使ったディスポーザブル型医療機器の製品化を目標に開発を進めている。医療現場のみならず他の産業分野にも使われる可能性を秘めた画期的な開発であり、同社の次代を担う製品になるのは間違いない。

医療現場とのコミュニケーションが不可欠の仕事

同社の製品開発は医療現場の課題解決が原点になっている。そのために医療従事者と深い信頼関係を築き、真のニーズを見つけることが求められている。江原氏は背景にある国内製品の開発環境について触れる。

「治療型医療機器の大半を輸入品が占めるのは、欧米の開発環境が日本よりずっと優れているからです」。欧米ではベンチャー企業が多く、資金の投入額も桁が違う。しかも医師が開発の専門職として関与している。日本はほとんどの医師が医療現場におり、機器の開発のようなビジネスに関わる人は少ない。

そのため企業の開発担当者が医師と密な連携を取ることが不可欠だ。開発する製品の良し悪しは医療現場とのコミュニケーションによって決まるといっても過言ではない。江原氏も医学学会に頻繁に足を運び、トレンドや最先端の医療を学んでいる。講演後には必ず医師とコンタクトをとり、自社の技術が役に立てるかどうかを一緒に考えていく。

医療現場で大研医器のブランドが知られるようになった今、医師とのコミュニケーションもずいぶん取りやすくなったと江原氏は言う。今後の課題はもっと領域を広げて、新たな製品の軸をつくっていくこと。「医療現場には小さなものから大きなものまで、あらゆるところにニーズがあります。それを見つけに積極的に外へ出ていくのが、われわれの仕事の第一歩です」