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日本の自動車産業は、絶対にガラパゴス化させてはならない

APTJ株式会社

日本の自動車産業を守るという志

「このままでは、車載OSはパソコンやスマートフォン用OSの二の舞いになりかねません」。高田広章代表取締役会長兼CTOはそう警鐘を鳴らす。今日、自動車の多くの機能がECU(車載コンピューター)で制御されている。従来、このECUはメーカーが独自に開発してきた。しかし自動車の機能が高度化するなか、車載コンピューターにも各社共通の「OS」が必要になってきた。

「車載用OSは、欧州発の『AUTOSAR(オートザー)』が国際標準となることは間違いありません」。そこで今日、世界中のソフトウェア企業がAUTOSAR準拠のSPF開発を急いでいる。高田氏によれば、その状況がパソコンやスマートフォンの黎明期に酷似しているのだという。

「以前、パソコンやスマートフォンの分野で、日本には独自の優れたOSがありました。しかしそれらは最後にガラパゴス化し、世界に後れをとってしまいました」。その反省が、冒頭の言葉につながっている。

「万一、車載SPFがすべて海外製になれば、国内メーカーがどれだけ良いハードをつくってもきめ細かいサポートをしにくくなります。それは日本の自動車産業の衰退を意味します」。そして、日本の自動車産業を守るために生まれたのがAPTJである。

日本の「知」と「技術」が立ち上がる

群雄割拠する車載SPF業界では、同社は「後発のベンチャー企業」にすぎない。しかし誕生以来、同社は世界的な注目を集め続けている。最大の要因は高田氏にある。

実は高田氏は、日本のリアルタイムOS(時間的制約のなかで処理を行う組み込みOS)研究の第一人者だ。国内標準である「ITRON」の研究を行うTOPPERSプロジェクトの代表も務める。

「ITRONはAUTOSARとよく似た構造を持っています。そこがわれわれのアドバンテージになります」。加えて、設立の経緯も強さになる。同社の場合、出資企業が特定の自動車メーカーではないため、系列を超えてSPFの開発に携わることができる。

一方、同社は複数の自動車部品サプライヤーと共同開発契約を締結しており、開発したSPFをすぐ実際の自動車部品で試すことができる。いわば独立系の強さとメーカー系の強さを併せ持っていることになる。

それは、同社が国立名古屋大学発のベンチャー企業であることに大いに関係がある。高嶋博之代表取締役社長は語る。「APTJには、自社だけがもうかれば良いという発想はありません。あくまでも私たちの目的は、日本の自動車業界を支えることなのです」

われわれが自動車の未来をつくる

日本の自動車業界を支えるという壮大な挑戦は、まだフェーズ1が始まったばかり。「フェーズ1では、設立から3年でAUTOSARの基本的なプラットホームをつくります」と高嶋氏。現バージョンのAUTOSARは、エンジンや足回りなどの制御系ECUを対象としている。だが同社は既にその先を見据えている。

「AUTOSARの次期バージョンには自動走行の機能が組み込まれます。われわれのフェーズ2では、自動走行関連のソフト開発を行う予定です」。より上流工程から開発に関わるため、AUTOSARにエンジニアを派遣する計画もある。

さらにフェーズ3では、車車間通信・路車間通信、ダイナミックマップの作成など、インフラを含めた未来の自動車技術の開発まで視野に入っている。そしてそのためのリサーチは既に始まっている。

「実は未来技術の分野でも、われわれには大きなアドバンテージがあります」。名古屋大学では、前述のAPコンソーシアムの他にもハード・ソフト・素材・インフラなど、あらゆるテーマで自動車に関する先進の研究が行われている。そんな研究機関の成果を世に送り出すのも、同社の使命の一つ。この恵まれた環境を武器に、彼らの挑戦は続く。