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KEYPERSON

アナログ回路開発技術者として放射線検出器の開発にトライ

株式会社ANSeeN開発部都木克之

将来性を感じたX線分野に新たな道を見つける

ANSeeNの開発部で、アナログ回路開発技術者として働く都木克之氏は、東京工業大学大学院を修了後、6年間勤めた会社では無線通信用の集積回路(IC)の開発をしていた。前職では、ある程度自分の裁量で仕事を進めることはできたが、最先端の研究開発に割って入るのは難しく、自分の将来性に限界を感じたのが転職を考えたきっかけだったという。

「CPUなどのICを製造する際は、PC上で設計した回路を実際の物としてつくり上げるわけですが、使用する製造装置によってどれだけ小さくつくれるか(プロセス)が変わってきます。CPUのプロセスは年々小さくなっているので、同じ面積でも、より多く回路をつくることができ、複雑な機能を実現できるようになっています。しかし、そのぶん製造コストが高くつくため、なかなか稟議(りんぎ)が通りません。研究開発でも本当に新しい、最先端の回路をつくるとなると、大学をはじめとした研究機関との連携が必須ですし、さらにコストがかかります。そうなると新しい技術に触れるプロジェクト数は限られますし、部署の規模にも大きく左右されます。今のままで開発者として最先端の技術に進んでいけるのかと不安は増すばかりでした」

ANSeeNの代表取締役小池氏と都木氏は、群馬工業高等専門学校時代の同級生だ。「なにか手伝えることはないか?」。都木氏は自身の行きづまりを打破するために、そう小池氏に声をかけていた。

放射線の突発的な信号を正確に捉える

ANSeeNに入社してからは、放射線を計測、判別するためのアナログ回路開発が都木氏の仕事だ。「小さい信号をきちんと受信して正しく機械に伝えるのが目的で、前職で携わっていた無線回路の設計と大枠は似ていますが、取り扱っている信号や世界がまったく異なるので、早く放射線の世界に慣れていきたいと思っています」

放射線検出でのアナログ回路開発の難しさは、無線の場合は基本的に連続信号であるのに対して放射線は単発の信号であり、しかもそのタイミングがわからないことだという。

「検出器が反応した瞬間にだけ、突発的に『ピコッ』とくるような信号をきちんと受信しなくてはいけません。無線の場合には、信号の送り手がわかっているため、信号を数式できちんと表すことができますが、放射線の場合は疑似的にしかできないので、それをどのようにしたら正確に検出できるかを考えています。難しいけれど、とても面白くやりがいを感じています」

サイクルの早い開発。エンジニアの腕の見せ所

大学発ベンチャーならではの機動力も都木氏のやりがいにつながっている。早いサイクルでさまざまな基盤の開発に取り組めるのはエンジニアとして、腕の見せ所だ。「いままではつくっているものが大きなものでしたから、多くても1年に1度、設計したものが製品になるかどうか。いまは、小さなものでしたら、1週間ぐらいで設計して、即刻つくってもらえます。フィードバックが早く、どのように改善すればいいのかをすぐに検討できるので、非常に有意義です」

ANSeeNでは、一般消費者向けのコンパクトな放射線検出器の開発も行っている。それらはコストやサイズといったことを重視しており、医用や大学の研究用として高い精度を極めるのとは異なるチャレンジがある。

「例えば、主要な放射線だけ計測するものならば、携帯しやすくより小型化を目指したり、細かい数値を見せるよりも単純に危険か否かの見極めに特化したりするなど、さまざまな可能性があります」。都木氏の新しい挑戦は、いまはじまったばかりだ。

あとがき

大学内の施設に入居し、研究開発と製品化に没頭する、シンプルで本質的な活動をしている企業だという印象を受けました。同社の技術力が高まれば、より体にやさしく、安価にレントゲン撮影ができる可能性があります。世界中の人にメリットがある事業を浜松の地から大きく育ててほしいと感じました。