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EXECUTIVE

自由な思考で、大学発ベンチャーのアドバンテージを生かす

株式会社ANSeeN代表取締役小池昭史

面白い分野へ。そのときどきの関心に合わせて進路を選択

群馬工業高等専門学校卒業後、地元を離れ、静岡大学情報学部への入学を決めたという小池氏。その選択理由は、「遠くへ出てみたい」というシンプルなものだった。関東圏から離れてみるのも面白そう、そんな軽いスタンスだ。

「浜松は文化的には関西の影響が強いので、人付き合いのスタイルが群馬とはまったく異なり面白いですね。気候としては、年間200日ぐらいは晴れて暖かく、夕立が降ることもないですし、冬でもめったに雪が降りません。群馬に暮らしていたときに比べて生活コストはかからず、住んでいて非常に楽です」

振り返れば、進路の選択は強い意志で選んできた結果というよりも、そのときどきの状況にまかせてきた。「どちらかといえば文系より理系が得意」ということで高専に進学し、静岡大学入学後は情報学を修士まで修めるも、放射線イメージングの研究を知れば「面白い分野があるな」と転身。放射線検出器の研究開発へと専門分野を変えてしまった。

その後、大学発ベンチャーとしてANSeeNの創業に関わり、20代後半で代表取締役に就任する。高専時代には考えてもみなかった人生を歩むことになっていた。

デバイスの研究開発に軸足を据えて

2009年から静岡大学電子工学研究所の青木研究室で小池氏は学んだ。青木教授、そして放射線イメージング研究との出合いが人生を大きく変えた。というのも、自由な研究と創造をうたう静岡大学のなかでも放射線イメージング研究は独創的な分野である。

「高専ではソフトウェア開発だけでなく、もう少しデバイス寄りのことにも取り組んでいました。放射線イメージングという、将来性のある分野でもう一度デバイスの研究開発に取り組んでみようと思ったのです」と小池氏。研究にのめり込むなかで、自らが関わる研究成果を事業にすることへの関心も高まっていった。

放射線イメージング研究は、医療や工業などでも広く使われており、いわゆる高エネルギー物理や原子力系の放射線計測研究のメインストリームからは少し外れている分野であるため、製品目標や事業化目標を立てやすい。さらに、急な依頼でも対応してくれるなど小回りの利く企業が少ない分野ということもあって、現状は独自のCdTe放射線検出器の開発以外では、さまざまな研究者からの要望に対応する日々だ。

「大学の教授などからの『こういうものは、できる?』というオーダーに対して一点物を製作する受託開発が多いです。いままで誰も製作したことがないものに取り組むので、目的を実現できるものができるとみなさん喜んでくださいます。ベンチャーとしては参入しやすく、やりがいがある分野だと感じています」

常識に捉われず、自由な発想でセンサーの開発に取り組む

起業から1年後に小池氏は代表取締役に就任した。一般企業での勤務経験がなく、代表取締役を務めることに不安を感じないこともない、というのが小池氏の正直な気持ちだ。だが、いわゆる社会の常識に捉われることがないのは、ある意味でメリットでもある。「今後も地方大学発のベンチャーとして、自由な発想をベースにこの浜松という地域だからこそできることに取り組んでいきたいですね」

小池氏が特に注力しているのが、新しいカメラの開発だ。ゆくゆくはCdTe放射線検出器をCCDやCMOSセンサーのように誰もが使える汎用センサーとして確立したうえで、いままでにない、まったく新しいカメラを開発したい。

「X線を扱う業界で、新しいカメラをつくろうと考えている人は、研究者でさえほとんどいません。放射線をより安全に、より安心して扱える環境を提供するためにも研究を進め、新しい放射線活用のデバイス開発に取り組んでいきたいと思います」